気まぐれヒーロー2




後部座席に腰を下ろすと、ハイジが誰かと話してる声が聞こえた。

てっきり飛野さんかと思ったけど、スマホを耳にあてている。どうやら電話中らしい。

それもすぐに終わって、車はまた夜の道を走り出した。


「飛野さん、そこでちょっと停めて」


しばらくして、ハイジが急にそう言った。
何事かと思って前の座席を見つめる。


「え、何するの?」

「心配すんな、時間は取らねえから」


たぶん私が早く帰りたいのを分かってて、すぐに済むと教えてくれたんだろう。

飛野さんは車を端に寄せ、静かに停車させた。

ハイジはドアを開けて外へ出ていき、道の向こうの角を曲がって姿が見えなくなった。

閑散とした住宅街の中に、ぽつんと停められた黒い車。
車内には、私と飛野さんだけ。

ハンドルをトントンと指で鳴らしている飛野さんに、ふと疑問が浮かんだ。


「飛野さんって、タバコ吸わないんですか?」


いや、そもそもこの質問自体おかしいんだけどね。
20歳まで吸っちゃいけないんだし。

でも他のヤンキーレンジャーはみんな吸ってるのに、飛野さんだけ見たことなかったからちょっと気になった。


「んー、昔は吸ってたんだけどな。やめたんだ、味覚狂うから」

「へえ、そうなんですか」


飛野さんらしい理由。
さすが、由緒正しい料亭の跡取り息子なだけある。


「……忙しくなるな、これから」

「へ?」

「生き返ったのか、ジローが。お前も苦労するな」


いきなりそんなことを言われて、意味がわからなくて固まった。
けれど飛野さんは意味深に口角を上げただけで、それ以上の言葉はなかった。

そうしているうちに、ハイジが戻ってきた。

バタンとドアを閉めると、私に何かを放ってよこす。


「ほら、着替えろ」


反射的にキャッチして、手に持ったそれをまじまじと見つめる。


「なんで!?新しい制服じゃん!」


ハイジが渡してきたのは、パリッと糊のきいた新品のカッターシャツ。

きれいに折り畳まれたそれを見て、思わず声を上げてしまった。