倉庫から少し離れたところで、ハイジに連れて行かれた先には、例の黒塗りの車が停まっていた。
きっと飛野さんは朝美と一緒に、中で待ってるんだろうな。
飛野さん、大丈夫かな。
イケメンハンター朝美様に、まさかハンティングされてたりしないよね。
……って、ちょっと待って。
私、なんか大事なこと忘れてない?
胸の奥がざわっとして、記憶を探る。
何だっけ……。
「あーっ!」
「おわっ、なんだ!?」
ドアに手をかけていたハイジは、ビックリして振り向いた。
そうだ!思い出した!!
私は急いでポケットからスマホを取り出した。
………………
…………
げえええ!!バッテリー切れてんじゃん!!
「ハイジ……どーしよー……」
「あ?どーしたんだよ。ひでえツラして」
一旦コイツのセリフは受け流すとして。
「お願い、スマホ貸してくれない?私のもうバッテリーなくて」
「いいけど、何に使うんだよ」
「……お母さんに連絡するの忘れてた」
ハイジは素直にスマホを渡してくれたけど、
「あーあ、知らねーぞ~。タヌキの釜茹でかなー丸焼きかなー」
なんて脅してきやがった。
まったく笑えん。
どんな制裁が待ってるかと思うと、震えが止まらなかった。
なんでこんな大事なことを、頭から消去してたんだ……!!
尋常じゃなく速くなる心臓を必死に抑えながら、私は電話をかけた。
ハイジが隣で「お前、呼吸おかしーぞ。……顔も」って言ってるのも、今は耳に入らない。
うちは門限を決めてるわけじゃないけど、「夜の10時までには必ず帰ってこい」と言われている。
それと──遅くなる時は必ず連絡すること。
電話でもメッセージでもいいから、一言報告しておくのは絶対だった。
それさえ守れば、お母さんにもお父さんにも怒られることはない。
でも、私はその“ルール”を初めて破ってしまった。
いったいどんな罰が与えられるのかと、恐ろしくて仕方なかった。
現在時刻は、21時半。
まだ帰れる時間ではあるけれど、連絡を入れてなかった時点でアウトだ。
コール音がやけに長く感じて、心臓がギュッと締めつけられる。
何回鳴ったかわからない頃、ようやくお母さんが電話に出てくれた。
ハイジのスマホからだから、警戒してたのかもしれない。
『──はい』
「あ……お母さん?えっと、わたし……」
『……もも?ももなの!?あんた今どこにいるの!?』


