気まぐれヒーロー2



倉庫から少し離れたところで、ハイジに連れて行かれた先には、例の黒塗りの車が停まっていた。

きっと飛野さんは朝美と一緒に、中で待ってるんだろうな。

飛野さん、大丈夫かな。
イケメンハンター朝美様に、まさかハンティングされてたりしないよね。


……って、ちょっと待って。
私、なんか大事なこと忘れてない?

胸の奥がざわっとして、記憶を探る。


何だっけ……。


「あーっ!」

「おわっ、なんだ!?」


ドアに手をかけていたハイジは、ビックリして振り向いた。


そうだ!思い出した!!


私は急いでポケットからスマホを取り出した。


………………

…………

げえええ!!バッテリー切れてんじゃん!!


「ハイジ……どーしよー……」

「あ?どーしたんだよ。ひでえツラして」


一旦コイツのセリフは受け流すとして。


「お願い、スマホ貸してくれない?私のもうバッテリーなくて」

「いいけど、何に使うんだよ」

「……お母さんに連絡するの忘れてた」


ハイジは素直にスマホを渡してくれたけど、


「あーあ、知らねーぞ~。タヌキの釜茹でかなー丸焼きかなー」


なんて脅してきやがった。


まったく笑えん。

どんな制裁が待ってるかと思うと、震えが止まらなかった。


なんでこんな大事なことを、頭から消去してたんだ……!!


尋常じゃなく速くなる心臓を必死に抑えながら、私は電話をかけた。

ハイジが隣で「お前、呼吸おかしーぞ。……顔も」って言ってるのも、今は耳に入らない。


うちは門限を決めてるわけじゃないけど、「夜の10時までには必ず帰ってこい」と言われている。

それと──遅くなる時は必ず連絡すること。

電話でもメッセージでもいいから、一言報告しておくのは絶対だった。

それさえ守れば、お母さんにもお父さんにも怒られることはない。

でも、私はその“ルール”を初めて破ってしまった。
いったいどんな罰が与えられるのかと、恐ろしくて仕方なかった。


現在時刻は、21時半。

まだ帰れる時間ではあるけれど、連絡を入れてなかった時点でアウトだ。

コール音がやけに長く感じて、心臓がギュッと締めつけられる。
何回鳴ったかわからない頃、ようやくお母さんが電話に出てくれた。

ハイジのスマホからだから、警戒してたのかもしれない。



『──はい』

「あ……お母さん?えっと、わたし……」

『……もも?ももなの!?あんた今どこにいるの!?』