気まぐれヒーロー2




「今日は、帰れ」



人目なんて気にせず、ぐすぐす泣く私の頭に、優しい手が置かれた。

次に降ってきた声は、さっきよりもずっと優しかった。




「おやすみ、な」




──大好き。

ジローさん、あなたが好き。


ジローさんの温もりに、ずっと包まれていたい。
その温かい手に、ずっと触れていたい。



「お前が俺んとこに帰ってこねえのも、仕方ねえ。お前にもお前の時間が必要なんだろうしな。家出しても元気なら、それでいい」



……まだジローさんは、私が家出してると思ってるらしい。

もう、それでもいいかな。



「明日、迎えに行く。首輪着けて待ってろよ」



そう言って彼が微笑んだ。
柔らかく、目を細めながら。




「またな」




ジローさん……

ちゃんと、わかってくれてたんだ。

私の不安も、心細さも。



“またな”

私が欲しかったのは、その言葉だった。


また明日、ジローさんと会える。
会っていいんだ。


ジローさんとの未来があるんだ。

嬉しすぎて、幸せの余韻が胸に溢れて。



「はい!」



笑ってそう返事するのが、精一杯だった。


ジローさんは、背の低い私に合わせて少し屈むと、おでこにふんわり口づけを落とした。

長い指で髪を優しく梳いてくれるのが、ちょっぴりくすぐったかった。


すっごくドキドキして、肩に力が入ってしまう。
顔から火が出そうなくらい真っ赤になった私を見て、彼は満足げに、静かに笑った。

そして、踵を返して歩き出す。


鷹の仲間やハイジとバカ騒ぎしている、タイガのもとへ。


私はただ、ぼうっとその背中を見送っていた。

悠々とした足取りで歩いていく彼を。