だってハイジの目はすごく真剣で、ハイジらしくなくて、私を惑わせる。
「放して!」
真っ直ぐな目を見ていられなくて……ハイジの手を払いのけた。
昨日のことを話せば、もっと問いつめられる。
コイツは何をしでかすか、わからない。
それに……私は未だハイジへの疑いの気持ちを抱いたままで、そんな思いで素直にはなれない。
どうにか話を逸らそうと、必死だった。
「そ、それよりアンタ、あのLIMEは何だったの?」
「あ?」
だからって……なんでこの話題をチョイスしたんだ私!!
何でもよかったんだ、ハイジの気を逸らせれば。
でも、今なんで“あのメッセージ”のことを、本人に直接聞いちゃったりしたんだ……!!
『なんで出てくんねえの?お前の声、聞きてえんだけど』
夜に電話がかかってきて、出なかったら、そんなゾワゾワするようなLIMEを送ってきて。
真相というか、何を思ってるのか知りたかったのもある。内容が内容なだけに、聞き辛いし……なんかハイジの送ってくるようなものでもないし。
怪しすぎて、勢いに任せて私はつい口を滑らしてしまった。
「LIME?何のことだよ」
「へ?……覚えてないの?」
ドキドキしてたのに。
ハイジは私の気持ちも露知らず、きょとんとしていた。
まさか、忘れたっていうんだろうか。
昨日の夜の話なのに、もうヤツの頭からは消え去っているっていうんだろうか。
私は小一時間ばかり悩んだっていうのに……。
脳みそ働かせて、ぐるぐるとハイジの思惑を探っていたっていうのに……!!
「っつーか俺、お前にLIME送ったこと一回もねえんだけど」
あっけらかんと言い放つハイジにムカついた私は、スマホを取り出すとトーク画面を開き、ヤツの目の前に突きつけてやった。
「ほら、これ!ちゃんと証拠は残ってるんだから!!」
ちゃんと『カルピスの少年ハイジ』って表示されてるし、ヤツからのLIMEには間違いない。
これを見れば、言い逃れは無理だろう。
もうどうにでもなれ精神で、私はハイジに本当のことを聞こうと思った。
それなのにハイジは……画面を見つめたまま、口を半開きで固まってて
「ピーチ姫さま……こりは何なんでございましょう」
と、ちょっとバカになりながら、虚ろな目でぼやいていた。
その後に「ボク、幻覚が見えてるみたいで……」と目をゴシゴシしていた。
全くもって、意味がわからなかった。

