気まぐれヒーロー2




だってハイジの目はすごく真剣で、ハイジらしくなくて、私を惑わせる。


「放して!」


真っ直ぐな目を見ていられなくて……ハイジの手を払いのけた。

昨日のことを話せば、もっと問いつめられる。

コイツは何をしでかすか、わからない。


それに……私は未だハイジへの疑いの気持ちを抱いたままで、そんな思いで素直にはなれない。

どうにか話を逸らそうと、必死だった。


「そ、それよりアンタ、あのLIMEは何だったの?」

「あ?」


だからって……なんでこの話題をチョイスしたんだ私!!

何でもよかったんだ、ハイジの気を逸らせれば。


でも、今なんで“あのメッセージ”のことを、本人に直接聞いちゃったりしたんだ……!!



『なんで出てくんねえの?お前の声、聞きてえんだけど』



夜に電話がかかってきて、出なかったら、そんなゾワゾワするようなLIMEを送ってきて。

真相というか、何を思ってるのか知りたかったのもある。内容が内容なだけに、聞き辛いし……なんかハイジの送ってくるようなものでもないし。

怪しすぎて、勢いに任せて私はつい口を滑らしてしまった。


「LIME?何のことだよ」

「へ?……覚えてないの?」


ドキドキしてたのに。
ハイジは私の気持ちも露知らず、きょとんとしていた。

まさか、忘れたっていうんだろうか。

昨日の夜の話なのに、もうヤツの頭からは消え去っているっていうんだろうか。

私は小一時間ばかり悩んだっていうのに……。

脳みそ働かせて、ぐるぐるとハイジの思惑を探っていたっていうのに……!!


「っつーか俺、お前にLIME送ったこと一回もねえんだけど」


あっけらかんと言い放つハイジにムカついた私は、スマホを取り出すとトーク画面を開き、ヤツの目の前に突きつけてやった。


「ほら、これ!ちゃんと証拠は残ってるんだから!!」


ちゃんと『カルピスの少年ハイジ』って表示されてるし、ヤツからのLIMEには間違いない。

これを見れば、言い逃れは無理だろう。

もうどうにでもなれ精神で、私はハイジに本当のことを聞こうと思った。


それなのにハイジは……画面を見つめたまま、口を半開きで固まってて



「ピーチ姫さま……こりは何なんでございましょう」



と、ちょっとバカになりながら、虚ろな目でぼやいていた。

その後に「ボク、幻覚が見えてるみたいで……」と目をゴシゴシしていた。


全くもって、意味がわからなかった。