「“あの日”から……響さんには、詫びてばっかだった。なんで俺を生かしたんだって。なんで、あんたじゃなかったんだって。あんたの命の方が、重いはずだろって」
ジローさんが話す一言一句を、この耳でしっかり聞いていた。
逃したくなかった。
私もジローさんから目を逸らさずに、ちゃんと向き合っていたかった。
「でもよ、わかったことがある。今、あの人に言えることがあるとしたら……それは謝罪じゃねえ。もう、詫びはしねえ」
彼は、私に真剣に伝えようとしてくれている。
同じ傷を抱えているあなただから。
何よりも近い、あなただからこそ──。
「感謝してる。俺の命を、未来に繋げてくれたこと。お前に、繋げてくれたこと。お前に……会わせてくれたこと」
なんて、強い瞳なんだろう。
どうしよう……私、もうダメだ。
胸が苦しい。
いっぱいいっぱいで、壊れそう。
私、ちゃんと立ってる?
ジローさんの目に映ってる?
それすらもわからない。
視界が歪んで。
ちゃんと、彼を見ていたいのに。
「ありがてえと、今はそう思ってる。もう少しでまた、失うとこだった。仲間を。大切なものを。俺を見捨てず、離れていかなかったアイツらを」
本気で叱ってくれる人は、本気で想ってくれてる人。
とても、優しい人。
怒るというのは、自分の心をその人に曝け出さなければできないこと。
ジローさんには、躊躇わずにそうしてくれる仲間がいる。
タイガは、本気でぶつかってきた。
ハイジは、ジローさんのためにいつも動いてる。
ケイジくんは、私をみんなの仲間に迎え入れてくれた。
飛野さんは、ジローさんと向き合う場を作ってくれた。
みんな、彼のために。
ジローさんを思ってくれていたんだ。
不器用な、わかりにくい優しさで。
「お前が気づかせてくれた。俺には、お前が必要なんだよ」
そして、その言葉に救われたのは──私のほうだった。
人は、何度でも立ち上がれる。
何度でも、再生できる。
きっかけなんて、ほんの些細なこと。
気づかないだけで、誰の中にも強さはある。
生きようと、生きたいと思える……そんな“何か”を見つけること。
それが、生きるってことなのかもしれない。
絶望の底から立ち上がったジローさんの姿には、揺るぎない強さがあった。
そんな彼に、心が震える。
生きていける。ジローさんと。
一緒に、生きていけるんだ。
お兄ちゃんの願いが、想いが──ちゃんと届いたんだ。
彼に。


