「けど、はなっから諦めてたわけじゃねえ。あの人のいない世界でも何か掴めるもんがあるなら、探したいと思った。無茶やったって、その頃は無茶だとは思わなかったし他人を傷つけてもなんも感じなかった。殺したっていいし、殺されるならそれまでだってな」
「ジローさん……」
「狂った目で向かってくる野郎の、ドス黒い炎に飲まれてみてえとも思った。俺にはねえもんだったから。俺を殺してソイツの“生”が輝くってんなら、こんなつまんねえ命でもそれだけの価値があんのかって」
「……」
「聞いたんだろ、俺達の噂も。“黒鷹”のことも」
淡々と語るジローさんは冷静に見えたけど、その言葉一つ一つには彼が“隠してきた心”を少しずつ紐解いているように感じた。
ううん、違う。
きっと、これは彼の決意の表れなんだ。
偽りのない言葉で、私に見せてくれているんだ──本当の自分を。
「噂だけは、何となく……聞きました。でも私は──」
「噂だけじゃねえ、色々やってきたのは事実だ。大げさに広まってんのもあるけどな」
私の心の中を読んだみたいなセリフと、その落ち着いた目。
さっきまで自分をおじいちゃんと勘違いしてたジローさんとは、とても同じ人に思えなかった。
でも彼の言葉の裏には……“黒鷹”が、ただの陽気な仲良しサークルなんかじゃなく、危険で、油断できない何かを抱えた集団なんだって意味が含まれていた。
それは、時折タイガやハイジ、飛野さんまでもが見せる“獣みたいな目”からも、なんとなく感じ取っていたことだった。
これから同じ時間を共有しても、彼らの世界を理解できる日は来ないかもしれない。
今は、何事もないみたいに笑っているけれど……どんなに壮絶な過去を歩んできたんだろう。
それでも──。
「わかってます。ジローさんの言うように、みんなが私の思ってるような“いい人”じゃないこと。だけどバカみたいに笑って、くだらないことで盛り上がってるあの時間も、ちゃんと彼らの一部でしょ?」
彼らが恐れられるにはそれだけの理由がある。
たとえその手が、誰かの血で染まっていたしても。
私は実際に見てきたわけじゃないし、責める権利もない。
ただ、受け入れる。
そして受け止めるだけ。


