ひとまず、ジローさんはいなくならないってわかっただけで、長い長いため息をついた。
本気で不安になったんだから……。
心配で心配で、もうおかしくなりそうだった。
つまり、タイガと太郎さんが、ジローさんの寝ている間に真っ黒だった彼の髪を銀色に染め上げたらしい。高校に入りたての頃の話だって。
黒メッシュを入れてるのかなと思ってたのも、実は寝てたジローさんが動き回るもんだからうまくできずに単にムラになっただけだって。
二人のおもちゃになってたことにジローさんは一切気づかず、朝起きて鏡に映った自分を見て、ひどくショックを受けたらしい。
なぜかおじいちゃんになってる、と。
愕然とするジローさんに、「玉手箱を開けたからだよ」なんて幼稚園児でも引っかからないような嘘を吹き込んだら、ジローさんは信じ切ったらしく──
「タマのお手箱……」
と、うわ言のようにボソボソ呟いていたと。
結局、ジローさんはますます暗黒界に堕ちちゃって、逆効果だったらしい。
……この人達の思考回路は本当に理解できない。
イタズラで済むレベルなんだろうか。
でも済ましちゃってるもんね。相手がジローさんだしね……。
なんか……先行き不安になってきた。
私、この人たちの中でちゃんとやっていけるのかな……。
「ジローさん、ジローさんはおじいちゃんじゃないですよ。それは白髪じゃなくて、オシャレなんですよ。カッコいいですよ」
「……オシャレ染め?」
いや、オシャレ染めて。
ジローさん。
その言い方はちょっとおじいちゃんっぽいから、やめて欲しい。
「もともと中身がジジくせえんだから、変わんねーだろ」
タイガのその言葉に、一理あるなと納得してしまう自分がイヤだった。
「トラ、俺ネバネバしてねーけど。土で育った覚えもねーよ」
「ああそーだな!!『そりゃオクラだろ!』こう言えば満足か!」
ネクラをオクラと勘違いしちゃうジローさんも。
そんなジローさんの何もかもを、言われずともちゃっかり理解してるタイガも──
大好きだった。
二人の関係が、羨ましいとさえ思えるほどに。
ジローさんとタイガのやり取りが可笑しくて、つい声を出して笑ってたら……オクラなジローさんが、私を真っ直ぐに見つめてくるから。
ドキッとした。
「じいさんじゃねーんなら、寿命延びたんだよな。お前と同じだけ、俺は生きられるってことか」
寿命が延びたというより、もとからジローさんは若いままなのに。
たとえ中身がおじいちゃんみたいでも、綺麗で魅力的なことには変わりないのに。
私はそんなジローさんが、すごく好きなのに。


