「お前の面倒、最後まで見てやるつもりだった。けどな、俺……お前より先に死んじまうんだよ」
「……」
あとちょっと、泣いたフリしてていいかな。
「こればかりは俺の力じゃ、どうすることもできねえ」
あと、もうちょっとだけ……。
「俺、もう爺さんだし」
……ぬっ。
「こんなに白髪も増えちまって……」
………………
………え?
「なんか知んねえけど、もうずっと前のことだ。朝起きたらこんな髪になっててよ。急に老けちまってて……俺、白髪だらけだろ?」
え、ちょっ、いや……白髪?
白髪って……それ染めてるんだよね?
ジローさん、自分の好みで染めてるんじゃないの?
っていうか……白髪じゃなくて銀髪じゃ……。
「一晩で一気に老け込んじまった。ウラヤマシイダローみてえだ。だからよ、タマ。俺とお前に残された時間は、こんくらいだ」
そう言いながら哀愁を背負ったジローさんは、人差し指と親指をかろうじて合わせるほどに狭めてみせ、時間があと僅かしかないんだと示してきた。
その言葉に、鈍器で頭を殴られたような衝撃が走る。『ウラヤマシイダロー』が『ウラシマタロー』のことだと気づくまで、数秒かかった。
私は考えた。
めいっぱい考えた。
持てる知識を総動員して、考えまくった。
で、何となくなんだけど。
タイガに視線をじとーっと向けてみる。
「し、知らねーぞ、俺は何も知らねーからな!!ソイツが寝てる間に、タローちゃんと二人で髪の色抜いてやったなんてことは──……あっ」
イタズラ好きの金髪デビルは、あっさり白状した。
「……だってよー、暗えじゃんコイツ。陰気オーラぷんぷんすんじゃねーか。ネクラだしよー。嫌いなんだよ俺は。こーいう、世の中見下げた態度のヤロウはよ。せめて“見てくれ”だけでもな、景気づけにパーッと。してやったわけだ。まあ良かれと思ってやってやったんだ、許せ」
私以上にうっかりさんな金髪に。
「取り憑いてやる。タイガだけ、死んだ後天国じゃなくて私の妄想世界にぶち込むよう神様に頼んでやる」
と脅したら、真相をしぶしぶ話してくれた。
「オメーが言うとシャレになんねえんだよ!!そーいう力、マジで持ってそうだしな!!妄想の神様が全力でバックアップしてくれてるだろうしな!!」
って嫌味を返されたりはしたけれど。


