大好きで、大好きで、夢にまで見た人。
人を好きになるって、こんなにも苦しいんだって……生まれて初めて知った。
『好き』が大きすぎると、泣いてしまうくらいに切ないんだって、教えてくれた。
こんなにも胸が張り裂けそうで、割れそうに痛むなら。
息ができなくなるくらい涙を流すのなら……好きになりたくなかったとさえ、思った。
だけど、それ以上に、愛しくて愛しくてたまらなくて。
自分にも、誰かをここまで想える気持ちがあったんだって。
誰かを幸せにしてあげたいと、心から思えることが信じられなかった。
もっと近くにいたい。
もっと見つめ合っていたい。
もっと声を聞いていたい。
もっと、触れてほしい。触れていたい。
そう……『もっと』が止まらないんだ。
自分がここまで欲張りだってことも、知った。
恋をすることは、新しい自分を発見すること。
ジローさんは私に、たくさんの『初めて』をくれた。
“お前は、俺のそばにずっといてくれんの?”
でもね、まさかそんなセリフを、彼がくれるなんて思いもしなかった。
だって叶わない夢だったはずなのに。
ジローさんのそばにいたい。
そばにいさせてくれるの?
何度も何度も、唱えた言葉なのに。
“俺のそばで、笑っててくれんの?”
私のセリフ、取らないで。
ねえ、ジローさん。笑ってていいの?
私、ジローさんの隣で笑ってていいの?
一人じゃないよ?
ジローさんも一緒に、だよ?
ペットでいいから。
『彼女』はもう、あの女の人だってわかってるから。
「なんで?やだ……なんでそんなこと言うの?死ぬつもりなの?」
「……」
「まだ自分で自分を殺そうだなんて、思ってるの?」
「……」
「どうして!?タイガの言葉、聞いてたんじゃなかったの!?死んじゃダメだって、生きろって……みんなの言葉なんですよ!?みんなの思いを、タイガが代わりにあなたに伝えてくれたんじゃないですか!」
「……」
「なのに、なんで……!!」
もう、もどかしくて、じれったくて。
どうしたら、この人は未来を見てくれるんだろうって。
どうすれば、みんなの手を掴んでくれるんだろうって。
そればかりが私を占めて、非力な自分に腹が立つだけだった。
ほんとはちょっと、ちょっとだけジローさんにもムキーってなるけど。
飼い犬の性なのか、逆らえなかった。
「……わりィ」
どんなに喚いたって、彼が答えてくれたのはその一言。
希望を持つなって言われてるような、その一言。
タイガたちは不思議そうに、私たちを見守ってるだけだった。
一気に力が抜けて、私はジローさんの胸におでこを押しつけて……泣くだけだった。
彼に顔を見られないように。
こんな時に優しくなんかしてほしくないのに、ジローさんは労るように私の頭を撫でてくれる。
それが無性に、悲しかった。
「俺も、寿命には勝てねえ」
……ん?
不意に彼がぽつりと呟いた言葉は……意味がわからなかった。
だからもう少し、泣いていようと思った。


