気まぐれヒーロー2



大好きで、大好きで、夢にまで見た人。

人を好きになるって、こんなにも苦しいんだって……生まれて初めて知った。

『好き』が大きすぎると、泣いてしまうくらいに切ないんだって、教えてくれた。


こんなにも胸が張り裂けそうで、割れそうに痛むなら。
息ができなくなるくらい涙を流すのなら……好きになりたくなかったとさえ、思った。

だけど、それ以上に、愛しくて愛しくてたまらなくて。


自分にも、誰かをここまで想える気持ちがあったんだって。

誰かを幸せにしてあげたいと、心から思えることが信じられなかった。


もっと近くにいたい。

もっと見つめ合っていたい。

もっと声を聞いていたい。

もっと、触れてほしい。触れていたい。


そう……『もっと』が止まらないんだ。


自分がここまで欲張りだってことも、知った。

恋をすることは、新しい自分を発見すること。


ジローさんは私に、たくさんの『初めて』をくれた。



“お前は、俺のそばにずっといてくれんの?”



でもね、まさかそんなセリフを、彼がくれるなんて思いもしなかった。


だって叶わない夢だったはずなのに。

ジローさんのそばにいたい。
そばにいさせてくれるの?


何度も何度も、唱えた言葉なのに。




“俺のそばで、笑っててくれんの?”




私のセリフ、取らないで。

ねえ、ジローさん。笑ってていいの?
私、ジローさんの隣で笑ってていいの?

一人じゃないよ?
ジローさんも一緒に、だよ?


ペットでいいから。

『彼女』はもう、あの女の人だってわかってるから。



「なんで?やだ……なんでそんなこと言うの?死ぬつもりなの?」

「……」

「まだ自分で自分を殺そうだなんて、思ってるの?」

「……」

「どうして!?タイガの言葉、聞いてたんじゃなかったの!?死んじゃダメだって、生きろって……みんなの言葉なんですよ!?みんなの思いを、タイガが代わりにあなたに伝えてくれたんじゃないですか!」

「……」

「なのに、なんで……!!」



もう、もどかしくて、じれったくて。

どうしたら、この人は未来を見てくれるんだろうって。

どうすれば、みんなの手を掴んでくれるんだろうって。

そればかりが私を占めて、非力な自分に腹が立つだけだった。


ほんとはちょっと、ちょっとだけジローさんにもムキーってなるけど。

飼い犬の(さが)なのか、逆らえなかった。



「……わりィ」



どんなに喚いたって、彼が答えてくれたのはその一言。

希望を持つなって言われてるような、その一言。

タイガたちは不思議そうに、私たちを見守ってるだけだった。


一気に力が抜けて、私はジローさんの胸におでこを押しつけて……泣くだけだった。

彼に顔を見られないように。

こんな時に優しくなんかしてほしくないのに、ジローさんは労るように私の頭を撫でてくれる。


それが無性に、悲しかった。



「俺も、寿命には勝てねえ」



……ん?


不意に彼がぽつりと呟いた言葉は……意味がわからなかった。


だからもう少し、泣いていようと思った。