けれど、枯れることを知らない涙だけは、私の意思に反して止まってくれなかった。
呼吸を乱しながら泣き続ける私の頬に、誰かの指が静かに触れた。
「ごめんな」
かけられた柔らかい声に、戸惑いながら顔を上げる。
「泣かすつもりじゃなかった。情けねえ……お前にまで、みっともねえとこ晒しちまった」
そう言って見下ろしてくるジローさんの瞳は、哀しい愛に満ちていた。
大事そうに、私の涙を指で拭ってくれる。
脆い物を扱うように、その指は驚くほど、優しかった。
こんなにも……あなたの手は温かいのに。
「いいんです。みっともなくたって、いい。だって、強いだけがジローさんじゃないんですから。私は、ジローさんの強いところだけを見ていたいわけじゃないんです」
私は頬に添えられた彼の大きな手に、自分の小さな手をそっと重ねた。
「弱い自分を恥ずかしいって思う気持ち、よくわかります。私もそうだから。でも……こんなこと言ったら怒られるかもしれないけど、嬉しいんです、すごく。私にも、そういう部分を見せてくれたことが。ずっと不安だったから」
怪訝そうに眉を寄せるジローさんに、私はふふっと笑いかけていた。
意識しなくても、自然と笑みが零れた。
「何考えてるんだろうって。どういう人なんだろうって、怖くて。でも今のジローさんは……とても人間らしくて、安心しました」
「俺は人間だろ。何だと思ってたんだよ」
「……」
ウチュージン……とは言えない。
「お前は俺の犬じゃねえか」
え、やっぱりそうなの?
「俺が飼い主じゃ不満なのかよ」
えー、私何も言ってないのに!
拗ねだしたジローさんに焦りを感じ、私は彼の手をぎゅっと握り直した。
とりあえず話題を本筋に戻す。
「ジローさん……お願いです。自分を責めないで」
彼の視線がぐっと深くなり、黙って耳を傾けてくれる。
それはきっと、ジローさんの求めていることだろうから。
「私、詳しいことはわからないから……知ったようなこと言うなって、思うかもしれません。でも、お兄ちゃんがどんな人だったかは覚えてる。だからこれだけはわかります。お兄ちゃんが願ってるのは、ジローさんの幸せだけです。永遠に続く悲しみや、苦しみじゃない。ただ、生きて欲しい。それだけです」
きっと、きっとお兄ちゃんならそう言ってくれる。
もしも今ここにいて、ジローさんに伝えられる言葉があるなら──
絶対に、こう言うはずだ。
“生きろ”って。
“生き抜け”って。


