気まぐれヒーロー2



けれど、枯れることを知らない涙だけは、私の意思に反して止まってくれなかった。

呼吸を乱しながら泣き続ける私の頬に、誰かの指が静かに触れた。



「ごめんな」



かけられた柔らかい声に、戸惑いながら顔を上げる。



「泣かすつもりじゃなかった。情けねえ……お前にまで、みっともねえとこ晒しちまった」



そう言って見下ろしてくるジローさんの瞳は、哀しい愛に満ちていた。

大事そうに、私の涙を指で拭ってくれる。
脆い物を扱うように、その指は驚くほど、優しかった。


こんなにも……あなたの手は温かいのに。



「いいんです。みっともなくたって、いい。だって、強いだけがジローさんじゃないんですから。私は、ジローさんの強いところだけを見ていたいわけじゃないんです」



私は頬に添えられた彼の大きな手に、自分の小さな手をそっと重ねた。


「弱い自分を恥ずかしいって思う気持ち、よくわかります。私もそうだから。でも……こんなこと言ったら怒られるかもしれないけど、嬉しいんです、すごく。私にも、そういう部分を見せてくれたことが。ずっと不安だったから」


怪訝そうに眉を寄せるジローさんに、私はふふっと笑いかけていた。

意識しなくても、自然と笑みが零れた。


「何考えてるんだろうって。どういう人なんだろうって、怖くて。でも今のジローさんは……とても人間らしくて、安心しました」

「俺は人間だろ。何だと思ってたんだよ」

「……」


ウチュージン……とは言えない。



「お前は俺の犬じゃねえか」



え、やっぱりそうなの?



「俺が飼い主じゃ不満なのかよ」



えー、私何も言ってないのに!


拗ねだしたジローさんに焦りを感じ、私は彼の手をぎゅっと握り直した。

とりあえず話題を本筋に戻す。


「ジローさん……お願いです。自分を責めないで」


彼の視線がぐっと深くなり、黙って耳を傾けてくれる。

それはきっと、ジローさんの求めていることだろうから。



「私、詳しいことはわからないから……知ったようなこと言うなって、思うかもしれません。でも、お兄ちゃんがどんな人だったかは覚えてる。だからこれだけはわかります。お兄ちゃんが願ってるのは、ジローさんの幸せだけです。永遠に続く悲しみや、苦しみじゃない。ただ、生きて欲しい。それだけです」



きっと、きっとお兄ちゃんならそう言ってくれる。


もしも今ここにいて、ジローさんに伝えられる言葉があるなら──

絶対に、こう言うはずだ。



“生きろ”って。


“生き抜け”って。