「どうしましたの?」


 ロゼッタがクロエの視線の先を見ると、そこには王太子付きの文官であるライノアがいた。


「やっぱりいいわ、ライノア様! びっくりするぐらいかっこいい! 素敵! あの顔だけでお腹いっぱいになれちゃう!」

「そういえば、クロエは以前もそんなことを言っていらっしゃいましたわね」


 男性の好みについて話をしていたときに、クロエがライノアについて『最高の男』だと言っていたことを思い出す。


「え? どうしよう。声かけてみようかな」

「ライノア様に? やめといたほうがいいですわ。あの方の価値観はわたくしたちとは相容れませんわよ」


 ロゼッタは小さく首を傾げつつ、クロエの腕をそっと引く。