「少しぐらいレベルを落とすつもりは?」

「ありませんわ。最上級の暮らしができる男性一択です」

「でも、そういう男性が相手だと疲れそうじゃない? 自分を押し殺して生きていかなきゃいけなさそうだし、色々と気を使いそうで」

「それは……」


 ロゼッタはウィルバートとクローヴィスとのやり取りを思い出しながら、うーんと小さく唸り声を上げる。

 たしかに、ウィルバートと話すときはロゼッタは普段よりも数段、背伸びをする必要があった。バカにされるのは嫌だし、自分を大人っぽく、よりよく見せたいという気持ちがある。次回はもっとウィルバートの心をガッツリ掴まなければというプレッシャーもあるし、疲れないといえば嘘になる。

 クローヴィスに至ってはとにかく身分が高いから、不敬になるような言動ができない。彼のグイグイ迫ってくる性格も相まって、疲れないはずがなかった。


「でしたら、クロエなら男性についてどこまで妥協ができますの?」

「え〜〜? そういう聞き方をされると返答に困るんだけど……あっ!」


 と、クロエが小さく声を上げる。