「ねえロゼッタ嬢、世の中大事なものはお金だけじゃない。地位や権力も十分に大事だと思わないか?」

「権力……」


 ロゼッタがつぶやく。クローヴィスは大きく頷いた。


「君がデートをしているウィルバート殿では、俺のようにはいかないだろう。どれだけお金を持っていても、できないこと、得られないものはあるんだよ?」


 さりげなく『ウィルバートのことを知っている』と伝えつつ、クローヴィスはロゼッタをじっと見つめる。ロゼッタは「そうかもしれませんね」と下を向いた。


「今日は楽しい時間をありがとう」


 クローヴィスは立ち上がりロゼッタの前でひざまずくと、恭しく手を握った。


「俺とのこと、少しは真剣に考えてくれる気になっただろうか?」

「それは……」


 ほんのひと時の間に、クローヴィスの印象、評価は真逆に変化してしまった。腐っても王族――表面的にしかクローヴィスを見られていなかったことに気づき、ロゼッタは恥ずかしくなってしまう。