「そうか……だったら、俺の侍女にスカウトするのは無理そうだな」

「まあ! クローヴィス殿下ったら、そんなことを考えていらっしゃいましたの?」

「うん。そちらのほうがロゼッタ嬢を口説ける機会が増えるからね」


 サラリとそんなことを言われてしまい、ロゼッタの心臓がドキッと鳴る。クローヴィスの侍女たちが声には出さずにキャーキャーと騒いでいるのが見て取れて、ものすごく照れくさいし、いたたまれない。


「ご、ご冗談を……」

「冗談だと思う? 俺は本気だよ。そうじゃなきゃ、妹を使ってまで食事会をセッティングしたりしない」


 普段のヘラヘラした笑顔とは違う真剣な表情。ロゼッタはドギマギと視線を彷徨わせた。