「王太子殿下が特別ではないとでも?」

「そうですねぇ……王族はあくまで王族ですから」

「……? まあ、いいです。お預かりしましょう」


 彼女の意図はわからないが、尋ね返すほどの興味もない。ライノアは小さく頭を下げた。


「ありがとうございます。あの……もしよろしければ、わたくしをセリーナ殿下の執務室まで送ってくださいませんか?」

「は?」


 なんで僕が、とライノアが眉間にシワを寄せると、ロゼッタが悩ましげにため息をつく。


「さっきからなんだかめまいがして。途中で倒れたらと不安なんです」

「そうですか」


 だったらそのまま倒れればいいじゃないか、という言葉を必死にのみこみ、ライノアはロゼッタをジロリと見る。