「お兄様って……もしかしてクローヴィス殿下ですか?」

「それ以外に誰がいるのよ。ほら、以前お兄様と『一緒に食事をする』って約束してしまったでしょう? あれから毎日『ロゼッタはいつ時間がとれるのか』ってしつこくって。適当に誤魔化していたんだけど、いつまでもこのままってわけにはいかないし。これを機に男を転がす練習台として利用してみたらいいんじゃないかと思うのよ」

「セリーナ殿下……」


 相手は仮にも王族で、しかもロゼッタに想いを寄せているというのに、利用などしていいものなのだろうか? けれど、そう提案するセリーナの表情は活き活きと輝いており、喜びに満ちていて。


「――楽しんでいらっしゃいますね?」

「バレた? いいじゃない? お兄様はロゼッタと食事をするっていう願いが叶うし、あなたは経験値があげられる。わたくしはわたくしで面白いしで、誰も損しないんだもの」


 こんなふうに開き直られてしまってはどうしようもない。ロゼッタは「そうですね」とこたえざるをえなかった。