どこか寂し気な表情のセリーナに、ロゼッタはほんのりと胸が痛む。
 王族であるセリーナは自分の意思で伴侶を選ぶことができない。政略、国力のため、いずれは父親が選んだ相手と結婚をせねばならないのだ。ロゼッタの話を聞いて、疑似恋愛を楽しみたいと思うのに無理はない。ロゼッタはそっと目を伏せた。


「そうですわね……わたくし、これまではお相手の候補になりそうな男性を見つけること、縁を作ることに躍起になっておりましたの。幸いなことに、最近になってようやくターゲットを絞り込むことができまして。けれど、仲を深めようと思うとなかなか難しいのです。どこまで踏み込んでいいのか、どんなアプローチをすればいいのか迷ってまして」

「なるほどなるほど。これまでとは違うフェーズに来ているってわけか」


 ロゼッタがうなずく。セリーナはそっと首を傾げた。


「だったら、うちのお兄様を利用してみたら?」

「え?」


 思わぬ発言に、ロゼッタはギョッと目を丸くする。