「昼間ならまだしも、夜に女性を屋敷に招待したりしないよ。結婚前のご令嬢に、変な噂が立ったらいけないからね」

「ウィルバート様……」


 どこまでも余裕たっぷりなウィルバートの様子に、ロゼッタは顔を真っ赤にする。
 どうやら本気でからかわれていただけらしい。ロゼッタは思わず唇を尖らせた。


「わたくし、なんだか悔しいですわ」

「そう? 俺はすごくいい気分だよ。ロゼッタ嬢は本当に可愛いね」


 そう言ってウィルバートはロゼッタの頭を優しく撫でる。


(わかりましたわ)


 彼にとっては、ロゼッタはただの子ども――愛玩動物と同等なのだ。可愛がって、遊んで、楽しんでいる。おそらくまだ恋愛対象にすら入っていない。当然、結婚や愛人の候補にはなりえないだろう。
 それでも、彼がロゼッタに対してお金を惜しまないのであればそれでいいのだ。……いや、いいはずなのだが。


「次の機会には、なにがなんでも屋敷に招待したい女性だと言わせてみせますわ」

「それはいいね。楽しみにしてるよ」


 ウィルバートはそっと目を細める。本当に楽しくてたまらないといった表情だ。ロゼッタはふん、とそっぽを向いた。