そうこうしているうちに、空がオレンジ色に染まりはじめた。ウィルバートの隣を歩きながら、ロゼッタはちらりと彼を見上げる。


「――このあとどうする?」


 と、問いかけたのはウィルバートのほうだった。ロゼッタは思わずドキッとしつつ、すぐに彼から視線をそらしてしまう。


(このあと……)


 デートの間、ウィルバートはロゼッタに『どこに行きたいか』なんてたずねたりしなかった。常に彼が主導となり、ロマンチックなデートを演出してくれた。
 それなのに、じきに夜というこのタイミングでロゼッタの意思をたずねられ、ドギマギするなというほうが難しい。


「そういえば、ロゼッタ嬢は俺の屋敷に来てみたいって言ってたっけ」

「……! ええ」

(だけど…)


 男性の自宅に――それも夜に――訪れるなんて、周りから『そういうことをしている』と思われても仕方のない行動だ。庶民ならばまだしも、未婚の貴族令嬢が軽々としていい行動ではない。今後の婚活にも支障が出る可能性がある。