「本当に? 侍女の仕事って忙しいんだろう? 丸一日時間を作るの、大変だったんじゃない?」

「とんでもない! ウィルバート様のためなら、時間の都合なんていくらでもつけますわ! それに、セリーナ殿下にはわたくしの他にもたくさん侍女がおりますから」

「だけど、セリーナ殿下が一番頼りにしてるのはロゼッタ嬢なんだろう? 噂、聞いたよ。化粧やヘアセット、ファッションセンスが超一流の侍女がいるって。おかげでセリーナ殿下は王女ということを差し置いても、社交界で絶大な影響力を持つんだって」

「まあ、そんな噂が……?」


 ロゼッタがほんのりと頬を染める。
 正直なところセリーナを着飾ることは、自身の知識や好奇心を満たすことができる貴重な手段のひとつだし、自分では買えない高価なドレスを思う存分見たり触れたり堪能することができるから、ひたすら楽しいお仕事だ。それが、こんな形で評価されているとは知らなかったのである。


「いったい誰からそんな噂をお聞きになりましたの?」

「夜会で知り合ったご令嬢だよ。セリーナ殿下の話を彼女たちからよく聞くものだから」

「まあ、そうでしたの。それは嬉しいことですわ」


 ロゼッタは微笑みながらそうこたえた。……が、内心は穏やかではない。