「なんというか……令嬢らしからぬ令嬢ですね」


 ライノアが眉間にシワを寄せる。


「どういうところが?」

「奥ゆかしさがないというか……ガツガツしている感じがして。普通はもっと隠すだろう、と思うんですが」


 いい結婚をしたい――と思うのは当然の感情だ。けれど、大抵の女性はその感情、焦りを綺麗に隠し、男性が自分に惹かれてくれるのをじっと待つ。自分から積極的に動くのは恥ずかしいと感じるはずなのだ。当然、貴族としての体面やプライドなんかもあるし、だからこそ大抵が政略結婚を選択する。
 第一、マルクルにはすでに婚約者がいるわけで……。


「いいじゃないか。この広い世界、そういう子もいるって。」

「まあ、そうかもしれませんけど。少なくとも僕は好きになれません」


 今夜何度目になるかわからないため息をつきつつ、ライノアはロゼッタが消えた方角を見やるのだった。