(これは……! 脈アリと思ってもいいんですの!?)


 ロゼッタの胸がドキドキと鳴り響く。
 ……いや、まだだ。なんといっても相手は貴族。社交辞令の可能性は大いにある。油断大敵。隙を見せれば足をすくわれてしまうだろう。


「嬉しいですわ。トゥバルト様って本当に、わたくしの理想の殿方ですの。ハンサムで、たくましくて、そばにいるだけでドキドキしてしまいますわ」


 一番理想的な部分――お金持ちであることは口にせず、ロゼッタはうっとりと目を細める。


「こんな素敵な男性が未婚でいらっしゃるなんて信じられません。皆様本気で見る目がありませんわ」

「……いや、いくつか縁談をいただいたことはあるんだ。だが折り合いがつかなかったんだよ。俺には娘が――フローリアが一番大事だからな」


 トゥバルトが笑う。ロゼッタは「まあ!」と小さく驚いてみせた。
 だが、当然ながら、彼に娘がいることは事前に調査済みだ。


 トゥバルト・ドーハンは御年三十一歳。彼には今年四歳になる娘フローリアがいる。フローリアの母親は出産と同時に亡くなってしまったそうで、以後は乳母に養育されているらしい。……がトゥバルトは最近、フローリアの母親となってくれる女性を探しているのだそうだ。