「そうですか。けれどロゼッタ嬢、世の中にはお金よりも大切なものがあるでしょう?」


 ライノアがまた問いかける。ロゼッタは瞳いっぱいに涙をため、ぶんぶんと大きく首を横に振った。


「いいえ! この世で一番大切なものはお金です! お金なんです! それ以外が存在するはずがありません」

「……そうですか」


 二人を乗せた馬車がガタゴトと揺れる。先程までの和やかなムードから一転、なんとも重苦しい空気だ。


(やっぱりわたくし、ライノア様のことは好きになれませんわ)


 密かにため息をつきつつ、ロゼッタは窓の外を眺めるのだった。