「お金はね、いくらあってもいいんです! なくて困ることはあっても、あって困ることはないんですから! はじめから持つことを諦めて、今あるもので十分なんて、そんなふうにわたくしは思えません」

「……でしたら、あなたは今、幸せではないのですか?」


 ライノアが静かに問いかける。ロゼッタは「え?」と息をのんだ。


(わたくしが今、幸せかどうかですって?)


 そんなこと、考えたこともなかった。なぜならロゼッタは未来のことしか見ていない。いつか金持ちを捕まえて、思う存分お金を使って、そうして幸せになることしか考えていないのだから。


「し……幸せじゃありませんわ」


 きっと、そう。だって、ロゼッタの願いは叶っていないのだから。幸せであるはずがない。ロゼッタは自分に言い聞かせる。