婚活令嬢ロゼッタは、なによりお金を愛している!

「どうして? 普通の貴族に嫁ぐより、王族に嫁いだほうがよほどいい生活をできるわよ?」

「もとより普通の貴族に嫁ぐ気がございませんから」

「なるほど……そうきたか」


 セリーナは頭を抱えつつ、うーんと小さく唸った。


「でも、うちのお兄様って、性格はあんなだけど、顔はすこぶるいいじゃない?」

「殿下、わたくしは金持ちの不細工と貧乏なイケメンなら、迷わず金持ちの不細工を選ぶ女ですわ。たしかに、クローヴィス殿下は本当に美しいと思いますが、美しさではお腹は膨れませんのよ」


 ロゼッタが真顔で力説する。その真剣な眼差しにセリーナは思わず気圧されてしまった。


「そ、そうかもしれないけど! お金を持っていて、顔もよくて、社会的なステイタスも得られる相手って貴重でしょう? お兄様と結婚したらあなたは王子妃よ、王子妃! 全女性が憧れる地位を得られるのに……」

「わたくしには地位も名誉も必要ありませんわ。ほしいものは『お金』と、そこから得られるいい生活だけなのです。お金さえ持っていらっしゃるなら、お相手は平民でも、不細工でも、とびきりご年輩の方でも一向に構いませんわ」


 ロゼッタはそう言ってグッと大きく胸を張る。

 ロゼッタは別に誰かに憧れられたいからいい生活を送りたいと思うわけではない。着心地の良い可愛いドレスを着て自分自身が満足したい。美味しいものを食べて自分自身を喜ばせたい。素敵な場所を思う存分訪れて心の底から感動したい。悠々自適の生活を送って、自分自身が幸せを感じたいだけなのだ。
 クローヴィスと一緒になっても、ロゼッタの思い描く生活は実現しない。誰かに縛られる生活はごめんだった。