「殿下ったら……」


 ロゼッタが苦笑を漏らしているとライノアがスッと前に出る。


「今すぐには無理かもしれませんが」


 彼はロゼッタの手を握ると、真剣な表情でクローヴィスを見つめた。


「ロゼッタ様が望む生活を送れるよう励みます。必ず――そうお約束します」

「――ああ」


 クローヴィスはそう返事をすると、ようやく表情を和らげた。


 ホッと息をつくロゼッタへ、トゥバルトが静かに歩み寄る。


「体に気をつけて。なにかあれば必ず力になるから、頼ってほしい」

「トゥバルト様、ありがとうございます」

「それから、これは俺からの餞別として持っていってほしい」


 トゥバルトはそう言って、小さなビロードの小箱をロゼッタに手渡す。促されて開けてみると、中には小さいながら眩い光を放つ宝石が収まっていた。