「わかっていたんだ」


 クローヴィスは言いながらロゼッタを解放すると、ロゼッタに背を向けた。


「きっと、こうなるだろうって。俺を選んではもらえないと思っていた」

「――それでも、殿下はわたくしの意思を尊重してくださいました」


 本当は、国王に頼んで結婚に応じるよう命令することだってできた。ロゼッタの婚活相手を排除することも、ロゼッタの行動を制御することも、クローヴィスには可能だったはずだ。

 けれど、彼はそうはしなかった。
 クローヴィスは最後までロゼッタの意思を尊重し、選ばせてくれた。

 すべてはクローヴィスがロゼッタを愛しているから――幸せになってほしいからに他ならない。


「クローヴィス殿下、こんなどうしようもないわたくしを愛してくださって、ありがとうございました」


 ロゼッタがそう言うと、クローヴィスが小さく鼻を啜る音が聞こえた。