婚活令嬢ロゼッタは、なによりお金を愛している!

「ではまた。……我が愛しのロゼッタ嬢」


 手の甲に柔らかな唇の感触。ロゼッタの顔が真っ赤に染まる。


「兄様……」


 それから、呆れ顔のセリーナの頭をなでてからクローヴィスは部屋をあとにした。


(あ、朝からどっと疲れましたわ……)


 ロゼッタはドキドキとうるさい心臓を押さえつつ、ふぅと小さく息をつく。
 クローヴィスとかかわるといつもこうだ。強引で大胆で、ロゼッタは振り回されてばかりになってしまう。


「さて、ロゼッタ。少し、おしゃべりをしましょうか?」


 セリーナはそう言って、ソファをポンポンと軽く叩く。ロゼッタがそれに応じると、クロエ以外の人間に部屋から出るよう命じた。


「本当にお兄様の妃になる気はないの?」

「ありませんわ」


 ロゼッタが即答する。セリーナは思わず眉間にシワを寄せた。