「あなたの周りにはクローヴィス殿下や資産家の男性はたくさんいるし、僕がいない間に新たな出会いがあるかもしれない。正直に言うと怖いんです。待っていてほしいだなんて言える立場じゃないとわかってますから。それでも、僕は行かなければなりません。今変わらなければ――」

「それじゃあ、わたくしが困るのよ」


 ロゼッタはそう言ってライノアの胸に顔を埋める。ライノアは静かに目をみはった。


「嫌なの。あなたがいなくちゃ、わたくしは寂しいの! だって、わたくしの話を聞いて『仕方がないな』って笑ってくれるのはあなたぐらいなんだもの! ダメなところはダメだって言ってくれるし、それでも受け入れてくれる。ありのままのわたくしを見せられるのはライノア様だけなのよ」


 ロゼッタはお金のために、たくさんの男性と交流を重ねてきた。けれど、そのせいで自分をたくさん偽って、多くの嘘をついてきた。今思い返しても、それらは必要なことだったけれど、葛藤がなかったわけではない。

 ライノアはそんなロゼッタをまるごと受け入れて、愛してくれた。本当の意味で自分を見つめ直すきっかけをくれた。ライノアがいなくなれば、ロゼッタはまた自分を見失ってしまうかもしれない。そんなのは嫌だった。