「なんでも、王太子殿下が勧めたらしいの。隣国と文官の交換留学の話が出ているから、行ってきたほうがいいって。将来出世をしたいなら、絶対にいい経験になるからって」
「だけど……」
それでは、ロゼッタはどうなるのだろう? ――そう考えたところで、ロゼッタはハッと息を呑む。
(どうしてわたくしがそんなことを思うの?)
ライノアは婚活の対象者ではないし、はっきりと気持ちを打ち明けられたわけでもない。将来の約束も、相手を縛る権利も、隣国への留学という大事な話を打ち明けてもらうだけの関係も、なにも存在しないのだ。
(だけど――だけど!)
気づいたらロゼッタは執務室から駆け出していた。
(どうして? どうしてわたくしになにも言ってくださらなかったの?)
道すがら、無性に腹が立ってたまらなかった。手のひらに爪が食い込み、知らず知らずのうちに瞳に涙が溜まっていく。
王太子の執務室に到着してライノアを呼び出すこと数分、彼はいつもと変わらぬ雰囲気でロゼッタの前に姿を現した。
「だけど……」
それでは、ロゼッタはどうなるのだろう? ――そう考えたところで、ロゼッタはハッと息を呑む。
(どうしてわたくしがそんなことを思うの?)
ライノアは婚活の対象者ではないし、はっきりと気持ちを打ち明けられたわけでもない。将来の約束も、相手を縛る権利も、隣国への留学という大事な話を打ち明けてもらうだけの関係も、なにも存在しないのだ。
(だけど――だけど!)
気づいたらロゼッタは執務室から駆け出していた。
(どうして? どうしてわたくしになにも言ってくださらなかったの?)
道すがら、無性に腹が立ってたまらなかった。手のひらに爪が食い込み、知らず知らずのうちに瞳に涙が溜まっていく。
王太子の執務室に到着してライノアを呼び出すこと数分、彼はいつもと変わらぬ雰囲気でロゼッタの前に姿を現した。



