(美人だ……)


 女性にまったく興味がないライノアが目を奪われてしまうほど、とんでもなく美しい。
 銀色がかった桃色の髪に、神秘的な紫色の大きな瞳。真っ白な肌には傷一つなく、ついつい見入ってしまうほど。シンプルなベアトップドレスを見事に着こなし、首元にはサファイアのネックレスが輝いている。


「こんばんは、美しいお嬢様方。よく俺の名前がわかったね」


 と、従兄弟――マルクルが朗らかに挨拶をし、ライノアはハッと我に返った。


「当然ですわ。そちらの紋章、キーガン家のものでございましょう? お噂はかねがねおうかがいしておりますもの。ねえ、クロエ」

「ええ、ロゼッタ」


 そのときになってはじめて、ライノアは女性に同行者がいることに気付いた。ロゼッタほどではないが美しく、清楚で上品な女性だ。ロゼッタを大輪の花と称するなら、クロエのほうは小ぶりながら愛らしい花束のよう。おそらく彼女を妻にと望む男性は多いだろうとライノアは感じた。


「実はわたくしたち、セリーナ殿下の元で働いているのですが、キーガン家の領地で採れる宝石が殿下の大のお気に入りで! わたくしたちも見せていただいたんですけれども、本当に美しかったものですから、一度お話をうかがってみたいと話していましたの」

「へぇ……それは嬉しいなぁ」


 マルクルはロゼッタを見つめつつ、ニヤニヤと嬉しそうに笑っている。