「そうです。あなたがどれだけの資産を持っていようと、経済界に影響力を持っていようと、我が家はそれぐらいで揺らがないとおわかりいただけますか?」

「そ、れは……けれど――」

「まだ続けますか? だとしたら、黙っていないのは僕だけじゃありませんよ?」

「え?」


 ライノアの言葉にロゼッタが振り返る。するとそこには、クローヴィスとトゥバルトが立っていた。


「こんばんは、クロフォード伯爵夫人。俺達のことは当然知っているよね?」


 そう言って、クローヴィスが微笑む。満面の笑みを浮かべているが、瞳がまったく笑っていない。アバルディアは「あ……」とつぶやきながら、数歩後ずさった。