「僕はロゼッタ嬢がどういう女性なのかを知っています。お金が大好きなことも、そのためにたくさんの努力をしてきたことも。ロゼッタ嬢は貪欲で、自分の気持ちに正直な女性です。僕はロゼッタ嬢にたくさんの大事なことを教わってきました。……教えてください。確固たる価値観を持つこと、幸せになりたいと思うことの何が悪いんですか?」

「そ、れは……」


 ライノアの返事があまりに予想外だったのだろう。アバルディアは返す言葉が見つからないらしく、ウロウロと視線を彷徨わせている。


「そもそも、ロゼッタ嬢がお金にこだわるようになったのはあなたが原因でしょう? それなのに、自分という原因にはまったく目を向けず、ロゼッタ嬢を責めるだなんて、普通の感覚の人間ならできませんよ」

「なっ……! 失礼ね! あなた、どこの家の人間なの!? 私を誰だと思って……!」

「キーガン家の人間ですが、なにか?」

「キーガン家?」


 アバルディアがウッと言葉を飲み込む。成り金実業家のウィルバートとは違い、キーガン家は由緒正しき貴族であり、庶民上がりのアバルディアがどうこうできる相手ではない。
 ライノア自身は分家の人間で、これまで彼は家名を利用したことなど一度もなかった。けれど、ロゼッタのために使えるものはすべて使う――ライノアにはもう迷いはなかった。