婚活令嬢ロゼッタは、なによりお金を愛している!

「あっ、お兄様だわ!」


 と、セリーナが声をあげた。「お兄様」というのはクローヴィスではなく、一番上の兄である王太子のことだ。その傍らには王太子の補佐官であるライノアもいた。


(まあ! ライノア様ったら本当に、なんというか……変わったのね)


 ライノアはこれまでの夜会よりも数段上等な服に身を包んでいた。形や色合い自体が洗練されているし、胸元には大きなブローチが光り、スカーフやイヤリングなどで品よくまとめられている。オシャレで金銭的な余裕があり、仕事ができる男という感じだ。別人だと言われても納得するほどの変わりようである。


 ライノアはロゼッタの視線に気づいたらしい。そっと目元を和らげると、ペコリと頭を下げてきた。これまでにはない反応に、ロゼッタは思わずドキッとしてしまう。
 と同時に、令嬢たちがライノアを熱心に見つめ、話しかける機会をうかがっていることに気づき、なんとも言えない気分に駆られた。


(オシャレをするよう助言してきたのはわたくしなのに)


 どうしてこんな気持ちになるのだろう?
 やめやめ、と違う方向を見たロゼッタは、今度はトゥバルトの姿を見つけた。今夜は護衛として来ているのではなく招待客の立ち位置らしく、国王陛下と穏やかに談笑している。
 トゥバルトもまたロゼッタに気づくと、笑顔で手を振ってくれた。


(わたくしの都合でお別れしたのに)


 変わらず優しくしてくれるトゥバルトに嬉しくなる。ロゼッタが手を振り返すと、トゥバルトはふわりと目を細めた。