(そんな……)


 ロゼッタと一緒に婚活をしてきたクロエの結婚が決まった。それはとても喜ばしいことだ。けれど、不安と寂しさに襲われ、ロゼッタはそっと胸を押さえる。


 クロエが仕事を辞めること、後任の説明をセリーナから受けた後、集まった一同は解散した。――と同時に、ロゼッタはクロエをひっ捕まえ、執務室の奥へと連れて行く。


「どうして事前に相談してくれませんでしたの?」

「ごめんってば」


 バツが悪そうに笑うクロエに、ロゼッタは唇を尖らせる。


「お相手は四つ年上の子爵ですって? ちゃんとクロエを任せるに足る人ですの? 経済状況は? ルックスは? 人柄は?」

「ロゼッタは心配性だなぁ。大丈夫、ちゃんと会って確かめてきたわよ。お金は――ロゼッタの価値観から言えばそこそこというか、不合格かもしれないんだけど! 誠実で優しい人だった。婚約が決まってから毎日のように手紙をくれるし、この間も王都まで会いに来てくれたの」

「どうしてそのタイミングでわたくしに紹介してくれないのよ!」


 ロゼッタが言うと、クロエはクスクスと笑い声をあげた。