「ロゼッタ嬢……どうして」

「わたくしがそうだったんです。本当は父親に、わたくしを選んでほしかった。他のすべてを投げ捨ててでも、大事にしてほしかったんです」


 それは、ずっとずっと避け続けてきたロゼッタの本音。
 本当はお金なんていらなかった。たとえ借金を背負い続けることになっても、ロゼッタとともに生きる道を選んでほしかった。アバルディアを捨てて、ロゼッタを迎えに来てほしかった。もちろん、それが叶わないことはわかっているけれど、幼いロゼッタはずっと、父親を待っていたのだと思い知る。


「そんなふうにフローリアを想えるロゼッタ嬢なら、ともに生きていくことができると俺は思う。あなたは母親として、フローリアを誰よりも幸せにしてくれる女性だ。俺一人で育てるよりも、ロゼッタ嬢と一緒のほうが、きっと……」

「あいにくですが」


 ロゼッタは目尻にたまった涙を拭うと、満面の笑みを浮かべてトゥバルトを見つめる。