「あの、今日はフローリア様は?」

「ああ、フローリアなら家にいるよ」


 トゥバルトはそう言って目を細める。


「君に会いたがっていたのだが、デートに誘うのに子連れというのは気が引けて」

「そう……ですか」


 トゥバルトの腕を取りつつ、ロゼッタはなぜだか胸が痛んだ。


『すまない、ロゼッタ。これは必要なことなんだ』

(本当に? 本当に必要なことなの?)


 トゥバルトとともに馬車で街へと向かう。けれどその間、ロゼッタの頭の中では父親の声が絶えず聞こえてきて、自問自答を繰り返していた。