「正直僕は、自分のことなんてどうでもよかったんです。己の能力をそれなりに活かせて、それなりの生活が送れたら満足でしたし、今のままでも十分幸せだと思っていました。だけど、それではいけないと」

「わかります。ロゼッタを見ていたら、私ももっと貪欲にならなきゃって思いましたし、頑張ろうと思ったから」


 クロエはそう言って目を細める。


「ロゼッタのこと、よろしくお願いします。あの子、本当はあんまり強くないから」

「知っています」


 だからこそ愛おしい。守ってやりたいと思った。


「そのためにこそ、僕は変わらなければならないと思いました」


 ロゼッタが求めているのはライノアのような男性ではない。ロゼッタが求めているのはお金だから。

 それでも、幸せになりたいと藻掻き苦しむロゼッタを本当の意味で幸せにできるのは、自分だけなのではないか――いや、自分でありたいとそう思う。


「ライノア様、ありがとうございます」


 静かに涙を流すクロエに、ライノアはそっと微笑むのだった。