婚活令嬢ロゼッタは、なによりお金を愛している!

「ええっ!? ロゼッタったら、ライノア様へのお土産をまだ渡してなかったの?」


 と、いつのまにかクロエが二人のもとにやってきていて、そんなことを口にした。


「せっかく準備したのに、渡さないなんてもったいないじゃない? ロゼッタの主義に反するでしょう?」

「ええ、まあそうなのだけど……」


 時に人は、自分の主義主張よりも優先すべきものがあるはずだ。ロゼッタにとってそれは、クロエとの友情だったのだが。


「ごきげんよう、ライノア様! 先日はどうもありがとうございました」

「……いえ」


 先日というのはロゼッタがライノアにお土産を渡そうとした日――クロエがライノアからやんわりと振られた日をいうのだろう。なんだかいたたまれなくなって、ロゼッタはそっと視線を逸らした。