「どうか俺と結婚してほしい」

「クローヴィス殿下……」


 これ以上ないほどにまっすぐ求婚され、ロゼッタの心が大きく揺れる。


「もしも俺を選んでくれたら、俺のすべてでロゼッタ嬢を幸せにすると誓おう。だから……」

(このまま『はい』と返事をしたら――)


 ロゼッタはクローヴィスの言うとおりに幸せになれるのかもしれない。アバルディアの脅威から守られ、王族として優雅な生活を送ることができる。けれど――


「もう少しだけ、お時間をいただけませんか?」


 ロゼッタが返事をすると、クローヴィスが困ったように微笑む。


「ロゼッタ嬢ならそう言うと思っていた。……待つよ」

「ありがとうございます、クローヴィス殿下」


 そっと目を細めるロゼッタを、クローヴィスは縋るように見つめたのだった。