けれどそれは、当然のことだとロゼッタは思う。アバルディアを怒らせれば、資金や資材の調達が困難になる可能性が高いからだ。ウィルバートとアバルディアが直接取り引きをしていないにせよ、裏から手を回して事業の継続を困難にすることはいくらでもできる。ロゼッタの父親と結婚をしたことで、爵位や家名まで手に入れたアバルディアは、相当厄介な存在だった。


「わたくしはアバルディアという『お金』に負けたのです。もちろん、そうならずに済む相手をわたくしなりに見繕ってきたわけですけれども、それでも足りなかった。勝てなかったんです」

「俺ならロゼッタ嬢を幸せにできる」


 クローヴィスはそう言って、ロゼッタの手をぎゅっと握る。真剣な眼差しにたじろぎつつ、ロゼッタは静かに息を呑んだ。


「君を守るだけの権力が俺にはある。お金も――ロゼッタ嬢が望むような形ではないかもしれないが、最大限贅沢な生活を約束しよう」

「そ、れは……」

「ロゼッタ・クロフォード伯爵令嬢」


 戸惑うロゼッタの前にクローヴィスがひざまずく。