「――違う、守れていない」


 クローヴィスがロゼッタを見つめる。


「君を傷つけたくなかった」


 ロゼッタの胸がトクンと跳ねる。と同時に、とてつもない罪悪感に襲われ、ロゼッタはそっと視線を逸らした。


「わたくしは殿下にそこまで想っていただいていい女ではありません。昨夜だって、別の男性と夜会に出席しておりましたし」

「知っている。それでも、俺はロゼッタ嬢が好きなんだ」


 クローヴィスが言う。ロゼッタの胸が熱くなった。


「なあ、昨夜の一件でわかっただろう? お金だけではロゼッタ嬢は幸せになれないってことを」

「……そうかもしれません」


 金さえあればすべてが手に入る――ロゼッタはずっと、そう思いたかった。けれど、アバルディアに負けずとも劣らない金持ちのウィルバートは、ロゼッタではなくアバルディアを優先した。