「欲しいです」

「え?」

「ロゼッタ嬢が僕のために準備してくれたんでしょう? ください」

「それは、その……」


 クロエのことを考えると、断ったほうがいい――そう思っているのに、ライノアの真剣な表情を見るに「ダメ」と返事をしづらい。


「わかったわ」


 見つめ合うこと数分間。根負けしたロゼッタがそう言うと、ライノアは嬉しそうに微笑む。


「よかった」


 これまで見たことのない表情。ロゼッタの心臓がドキッと跳ねた。


(変なの)


 相手はあのライノアなのに――ライノアのはずなのに、たった一晩でこれまでの彼とは大きく変わったような感じがする。


(……変なの)


 ライノアの視線を感じつつ、ロゼッタは窓の外をそっと眺めるのだった。