『すまない、ロゼッタ。本当にすまない』


 ロゼッタの父親のすすり泣きが聞こえる。父親はロゼッタを抱きしめ、嗚咽を漏らして震えていた。


『私が本当に大事なのはおまえなんだ。けれど……すまない』

『わたくしもあのドレスが着たい。皆と同じ食事がしたい。もっといいベッドで眠って、もっといい家庭教師に学んで、それから、それから……』


 アバルディアはロゼッタの父親には自分たちと同じ生活をさせながら、ロゼッタだけを冷遇していた。使用人以下の粗末で少ない食事に、ドレスを買い与えることもない。使用人たちにもロゼッタをないがしろにするよう指示したし、まるで空気のように扱ってきた。

 時々、ロゼッタを気の毒に思った使用人たちが食事や雑貨を融通してくれたが、それらの行動はすぐにバレ、彼らは解雇されてしまった。