「クロエなら絶対大丈夫ですわ! あなたほどの美人、この国にはそう存在しませんもの!」

「そ……そう?」

「そうですわ! ここで妥協したらダメ。自分を安売りするなんて、わたくしが許しませんわ! なにがあっても最高の男、最高の幸せを掴みとるのです」


 ロゼッタのあまりの力説ぶりに、クロエはたまらずクスクスと笑い出す。「わかった、わかったわよ」と漏らすクロエに、ロゼッタはフッと目元を和らげた。


「だけど、最高の男っていうくくりなら、私出会っちゃったかも」

「え? いつ? いったい、どなたなんですの?」

「数日前の夜会で会った男性。ライノア様っておっしゃったかしら」

「ああ、あの人ですの……」


 ロゼッタは言いながら、みるみるトーンダウンしていく。彼女の価値基準が『金』であることは事前に明白だったため、クロエはただただ苦笑を漏らした。


「どういうところが?」

「顔ね。あと雰囲気」


 クロエがこたえると、ロゼッタは思い切り顔をしかめた。