それから、ロゼッタはウィルバートと一緒に会場を回った。ウィルバートは実業家らしく、とても顔が広い。知り合いに自分を紹介してもらうたびに、ロゼッタは底しれぬ喜びを感じていた。

 もちろん、恋人だとか婚約者として紹介してもらえるわけではないものの、ウィルバートがそういった雰囲気を匂わせるため、ついついその気になってしまう。ウィルバートにまったくその気がなければこうしてロゼッタをパートナーに選ばなかっただろうから、なおさらだ。


(このままいけば)


 ロゼッタは幸せになれるだろうか? お金や理想の生活を全部手に入れて、心の底から笑える日が来るだろうか? ――そうであってほしい。ロゼッタはウィルバートを見つめながら微笑む。


「――どうしてあなたがここにいるの?」


 けれど次の瞬間、ロゼッタの心と体が一気に凍りついた。


「え……?」


 まるで心臓が止まってしまったかのように、ロゼッタの全身から血の気が引いていく。目の前にいる人間を全力で拒絶しているのに、やけに五感がハッキリとしていて、どうすることもできない。