「ロゼッタがそんなふうになるなんてはじめてね」


 と、クロエがロゼッタに声をかけてきた。「ロゼッタはどこから見ても美人だし大丈夫よ」と言うクロエに、ロゼッタは首を横に振る。


「美人というだけではダメなのですわ。なにか、決め手になるものがわかればいいのだけど」

「そんなものがわかったら、誰も苦労はしないわよ。だけど、それだけロゼッタがウィルバート様に対して本気ってことよね。違う?」


 クロエの質問に、ロゼッタの胸がキュッと軋む。それからそっと視線を彷徨わせつつ、指をもじもじと絡めた。


 ロゼッタは今夜、ウィルバートから夜会のパートナーに誘われている。出会った場所こそ夜会会場ではあったものの、パートナーとして出席するのははじめてのことだ。緊張するなというほうが難しい。