「ロゼッタはお金がなにより大事な人ですもの。話がまったく面白くない億万長者の話でも、ロゼッタからすれば『最高に面白い』って評価になるので、気にしなくて大丈夫ですよ」

(そうですけど! そうですけども……!)


 聞いていてあまりいい気はしない。ついこの間まで、クロエも自分と思っていたからこそ、そう感じるのかもしれないが、なんだか自分を使ってライノアへのポイント稼ぎをされているようだ。

 ――いや、それでも構わないと思いつつ、ロゼッタは唇を尖らせる。

 使えるものはなんでも使え、というのがロゼッタのポリシーだ。ロゼッタが逆の立場なら、クロエと同じことをしただろう。それで攻略対象者からの評価があがるなら、友情なんて二の次三の次でいい。


(でも……)

「そうですね」


 と、ライノアが笑う。


「あの人はそういう女性です」


 ライノアがそう言うのを聞きながら、ロゼッタはなぜだか泣きたくなった。
 とても優しい表情、声だった。まるで自分が受け入れてもらえたような――そのままでいいと言ってもらえたような気がした。ライノアとロゼッタの価値観は決して相容れない。絶対にわかりあえないと思っていたのに。