「そろそろ帰ってもいいですか? 顔を売るべき相手への挨拶はすでに済ませましたし……」

「なにを言う! ここからが本番だろう?」


 と、彼は会場をぐるりと見回す。ライノアが見れば、従兄弟の視線の先には、見目麗しい女性陣の姿があった。


「また僕をだしに使うつもりですか?」

「もちろん。せっかく見た目のいい従兄弟を持って生まれたんだから有効活用しなきゃな! 美しい女性とお知り合いになるチャンスだろう? 俺が逃すわけがない」


 ドン、と胸を叩く従兄弟を見ながら、ライノアがまたため息をついたときだった。


「あの……キーガン家の方々でいらっしゃいますか? もしかして、マルクル様……?」


 女性がライノアたちに声をかけてきた。顔を上げ、声の主を確認する――と、ライノアは思わず息を呑んだ。