(わたくしはお金を愛している)


 何度も何度も、自分に魔法をかけるかのように言い聞かせながら、ロゼッタは残りの荷物を整理していく。あっという間に片付けが終わってしまった。


(――よし、決めた)

「あれ? ロゼッタ?」


 数十分後、ロゼッタはセリーナの執務室にいた。仕事用のドレスに着替え、同僚たちへのお土産を持参し、ロゼッタはクロエたちに微笑みかける。


「明後日までお休みでしょう? もしかして、お土産を渡すために来てくれたの? 復帰後でよかったのに」

「それもあるけど、なんだか無性に仕事がしたかったの」


 ロゼッタの言葉に、同僚たちが目を丸くして顔を見合わせた。
 らしくないことは本人が一番よくわかっている。けれど、こうでもしないと自分が自分じゃなくなるような心地がして、どうしても嫌だったのだ。


「そりゃあ、人手が多いほうがこっちは助かるけど」

「でしょう?」


 どうかこれ以上理由を聞かないでほしいと願いつつ、ロゼッタは満面の笑みを浮かべるのだった。